ミニレッスン

歌い手のためのミニレッスン

87歳になっても歌っていられるのはアメリカで 学んだ発声法のお蔭。 これから毎月少しずつ経験から得たヒントを 紹介しよう。
若い歌い手さん達に何かのヒントになれば
嬉しい。

 

No.22 総集編2 自然体の歌

声帯は喉にあるから、と喉だけを絞めつけたり振り絞って歌うな、と言うのが最後のアドバイスです。

頭声、鼻声、喉声、胸声、地声、の中で一番聞き苦しいのは喉声です。

聞いている人まで苦しくなります。

それから自然なビブラートは心地よいけれど、チリチリと細かいトレモロや

大波のような深い大きな声揺れは支え不足から起こります。

お年寄りの歌が大きく揺れるのは横隔膜の筋肉が弱って来るからです。

発声、姿勢、呼吸、口、発音、と色々書いてきましたが、正しい歌い方とは、

横隔膜の支えの上、自由な体で自然に歌う事につきます。

そうすればきっと90歳、100歳でも歌う事が出来るでしょう。

次回からホームページ上で「私の留学記」が始まります。


No.21 総集編1

毎月ミニレッスンを続けて20回が過ぎました。5月、6月は御さらい総集編です。
夏からは新しい頁「私の留学記」が始まります。
芸大生の頃はレッスンの日は必ず緊張から下痢をしていた私がどうして急にレッスンが
楽しくなったか、初めてのカルチャーショックの色々等をお届けしますのでお楽しみに。

さてレッスンNo.1と2 にもどってみましょう。
とにかく喉の周辺をリラックスさせる(力を抜く)事と、横隔膜をしっかり使う事と、
鼻からたっぷり呼吸を取り(口ではなく)その息に声を載せる事、これがMUST
だと言う事をもう一度思い出して下さい。


No.20 声帯にも筋トレを

私達の体は筋トレをしないとドンドン弱ってしまう。
声帯も口唇も舌も筋肉の一部、使わないでいると動かなくなってしまう。
声を出しにくくなるばかりか、カツゼツも悪くなって、自分では普通にしゃべっているつもりでも、
何を言って居るのか伝わらなくなってしまった高齢者も多い。
意識してはっきりしゃべり、口を動かし、舌を動かし、歌を歌う。
挨拶もはっきり、明るく、笑い顔で大きな声を出そう。
声楽家を目指す皆さんは毎日の体のストレッチ運動に、声帯のリラックス訓練を5分でもよいから加えよう。
1時間も2時間もわーわーと大声でアリアを歌うよりメンテナンスをする事の方が大切です。 


No.19 動物から学ぶ喉

私達は動物の声から学ぶことも多い。

窓ぎわにきて大きな声で鳴くカラスの羽の下で凄く動いている横隔膜、だからあんな小さい体で大きな声が出るのだろう。

ウグイスがクレシェンドの練習をしているのを聞いた。

初めは下手で声がひっくりかえるが、そのうち”ホーー”の部分にすばらしいP~Fが入るようになる。

前回ネコの声の事を書いたが、どういう風に自分の軟口蓋が動くとあの“Ngnya-”と言う声になるのか実験してごらんなさい。

私が最初に習ったアメリカ人の先生は何時もネコの声の真似から始まり、喉を絞めた時とリラックスして空いた時の感覚の違いを教えて下さった。

私達は案外自分の喉の動きを知らない。

ちなみに日本語の「が」には2種類あるのはご存じだろう。

「合唱」と言う時と[音楽]と言う時の“が”は違う。

喉がどうなった時鼻濁音になるのか、自分で自分の喉を動かしたり変えたり出来る事はよい発声法につながる。 


No.18 ネコになって

ネコブームのこの頃ですが私がアメりカから連れてきたシャムネコは”ウンニャオ“と太いドラマチックないい声でした。
次に日本で病院の庭から引き取ったキジネコは”アーン“と小さい裏声でした。

猫の声も生まれつき色々あるようです。
この小さい裏声”アーン”は私達の発声練習にとてもよいのです。
出来るだけ高いポジションで小さい声で鼻と軟口蓋が合う所でアーンとかクンクンとか言ってみてください。
これが出来る方は発声時に力が入っていない証拠です。
さあ、猫になって見てはいかが?

 


No.17 良い声はよい発声?

人の声質は生まれた時から決まっているようだ。

私の大叔母は電話でいつも母と私と妹を間違えてしゃべりだしては「あれ?違うの?」と言って笑っていた。

生まれつきの声は直せないが発声法で心地よい声に直すことはできる。声が大きく美声に生まれた人は幸せ。

でも時に自分の声にうっとりして音楽作りを軽んじてしまうひとが多い。
 1番恵まれているのは美声に生まれ、自然な発声が出来る人。
 2番目は美声や大きな声ではないが、良い発声で歌う人。     
 3番目は美声なのに発声が悪くて、聞いていてもつらくなる人。   
 4番目、これが一番多い、声もないし発声が悪いひと。      
 5番目、声もなく、発声が悪く、音楽性のないひと。 


No.16 スタッカートで発声してみよう

高音が出ない,頭声をどうして出すのか解らない、と言う方、スタッカートをおすすめします。

スタッカートとは短くハ、ハ、ハと横隔膜から頭の共鳴空間にぶつける音の事で、

喉や舌には絶対に力を入れないで出す声の事です。

言葉で歌おうとすると高音が出ない方も、長くのばすと苦しい方も楽なスタッカートなら出るハズです。

まず口は大きくあけましょう。

喉と舌根をリラックスし、上顎の奥,軟口蓋を引き上げて(あくびの形)ハツと空気を送ってみてください。

きっと高い声も楽に出るでしょう。


No.15 “Be An Entertainer”

レッスンに来る若い方達は皆いい声をしていて、楽譜には忠実、音程もリズムも正しく、

難しいテクニックも高音も気張って出せる。

でも顔が引きつっていたり、額に八の字が入っていたり、膝を曲げて格好かまわず叫ぶ方が多い。

残念ながらその人達の歌で私は鳥肌が立つような感動で涙が出そうになったりしない。

先生の真似をして習った通りに歌う歌手のなんと多い事か。

自分の個性を出し自由に体も声もときはなして楽しみながら歌う、これが多くの日本人の課題だと思う。

バッハを歌おうがミュージカルを歌おうが私達はエンターテイナーにならなくてはならない。

お金を払って遠路来て下さったお客様が気持ちよく家路について下さるような演奏をする責任がある。

パーフェクトに歌っているのに輝いていない貴女、それは本当の音楽の姿ではありません。


No.14 バーンスタインの言葉 
今年2018年は作曲家バーンスタインの生誕100年で、彼の作品による多くのコンサートが計画されている。

以下私達が常に心に留め置きたいバーンスタインの言葉である。

11月3日には二期会英研のバースタイン コンサートもある。(コンサート案内)

"足の先から頭まで一つ一つの音符を歌い、奏しなさい。

 音楽は単にビートを刻み、きちんと歌う事ではない"

"音楽にカテゴリーはない。宗教曲からロックまで良い音楽はよい。"

"音楽を愛する事は人を愛する事である。"


No.13  本番前の心構え 続編

本番近くなったらとにかく風邪をひかないように注意するのはもちろんだが、ひいてしまったり、

重なる練習の疲れや睡眠不足、精神的ストレスで喉の具合が悪くなてしまう事もある。
そんな時、これでもか、これでもかと声を振り絞るのは逆効果。
軽い小さい声でもよいから喉を絞めつけずに歌の内容を伝える事に専念しよう。
咳が出そうな時は口でなく鼻から吸うとのどを刺激しないので咳が出にくい。
強いうがい薬より重曹を溶かした物でうがいするのは案外よく効く。
ドライマウスにならないようマスクを横2つ折りにして鼻だけ出して寝るのも良い。
漢方薬やトローチ、咳止めも良いが、当日は抗生物質や強い風邪薬を飲まない方が良い。

以前本番でうつらうつらして眠ってしまいそうになった事があったので御注意を。


No.12  本番前の心構え

今回はコンサートの本番を迎えようとしている方へのアドバイスをしましょう。 

何より大切なのは心に余裕を持つことです。 

あわててコーヒーをこぼしたり、ストッキングを破いたりしただけでアガってしまって言葉が出なくなる事もあります。 

当然の事ですが衣装、靴、装飾品、ヘアスタイルなどは前もって決めておくのはもちろん、楽屋での飲食も用意しておきましょう。 

ちなみにコーヒーはカフェインが入っているので落ちつけなくなる人もあり、直前に塩からい物を食べるとドライマウスになるので注意。

パンよりおにぎりのほうが もち がよいし、前日にステーキを食べておくとスタミナが出ます!

アイスクリームやピーナツやおせんべいなどは喉によくありません。 

当日は時間をたっぷりとって会場へ。 

楽屋では発声と共に体のストレッチや軽いジャンプなどをして体を目覚めさせましょう。 

だまって坐って待っているのもいけませんが、はしゃいでおしゃべりをし過ぎるのもよくありません。 

ヒールをはく場合は当日の靴をはいて歩いたり歌ってみるのも大切。 

楽屋を出た所からステージの中央に着くまでも演奏の一部である事を忘れないように。 

悪い姿勢でドタドタ歩かないよう、顔は7分お客様の方へ向け、ニッコリして出ましょう。 

「さあ、私の歌を楽しんで下さい!」と言う第一印象を与えましょう。 

貴女の方からお客様をリラックスさせる、するとお客様も笑顔で迎えて下さり、マジックのようにコミュニケーションが始まるのです。


No.11 喉の奥の訓練
年を重ねると手足の筋肉が弱ると同時に喉も筋肉なので弱って行きます。

喉の筋肉を訓練する事で弱化を防ぎましょう。

残念ながら日本語は喉の奥部分をほとんど使わないので意識して次の3つの練習をしましょう。

 1.Nga,Nga(んが)は上あごの奥と舌の奥をくっつける練習

 2.Da,Da(だだ)上あごと舌の真ん中あたりをぶつけ合う練習

 3.La,La(らら)舌の先だけを上歯の裏にたたく練習                    

 4.Pa,Pa(ぱぱ)上下唇をぶつけ合う練習

この訓練によって歌詞がはっきりするのはもちろん、しゃべり言葉もはっきりしますし、気管と食道の切り替え扉をしっかり動かせることで誤嚥という恐ろしい事態を招かないようにするのに役にたちます。

毎日何回か声に出してみましょう。


No.10 "Big Breath"の続き
歌の途中で息が足りなくなってしまって、自分は息が短いのです、と言う方が居られます。

実は日本人女性の肺活量は体型とあまり関係なく皆ほとんど同じです。

息が足りなくなる理由は3つあります。

 1:歌い始める時肺一杯にBig Breathを吸っていない人。

 2:息の貯金が出来ないで無駄使いしている人(横隔膜が弱い)。

 3:頭の音でせっかく吸った息の半分位を使ってしまう人(最初の声から常にffで歌う癖)。

横隔膜は歌っている間はずっと固くなっている事、そうすることで吸った息を少しずつ使う、我慢して横隔膜を急に緩めない事に注意して歌いましょう。


No.9 Big Breath
アメリカで何時も先生に"Big Breath!"(大きく息を!)と言われました。

歌の基本は大きな深い息を上手に使う事です。

バースデイケーキに立てられたローソクを1息で消してみましょう。

私?もう87本も立てられませんけれど。

口の前に紙を下げるように持ち、フツと吹くと紙がぴらぴらと音を立てて動くか試してみましょう。

消せない、動かない、なら息が弱い証拠です。ラッパを吹くつもりでBigBreathを鼻から吸いましょう。

例えばフォスターの「夢路より」の最初のフレーズを英語でしゃべってみましょう。

"Beautiful Dreamer"と一息でしゃべってから歌ってみてください。

途中で絶対に空気の流れを止めない、横隔膜を動かさないでBig Breath を。


No.8 楽しく歌って居ますか?
気持ちがいいなア、楽しいなア、と思って歌って居ますか?

鏡を見て歌って居る自分をよく見てみましょう。

若し額に八の字が入っていたら発声に無理があるからです。

肩が上がっていたら不必要な力が入っているからです。

高音を出そうとする時手を一緒に上げる癖のある方、手を上げても何も発声の助けになっていませんから止めましょう。

体重は両足でしっかり支えましょう。

ゆらゆらと重心を移動させないで歌いましょう。

口は大きく開いていますか?喉の奥が見えるように。

そうすることで声帯を通った空気が息に乗って自然に流れ、気持ちよく歌えるはずです。


No.7 歌う前に考えてほしいこと
動物の中で人間だけが言葉を持って居り、音楽の中で歌詞を生かして演奏出来るのは声楽だけです。

立派な声で高度な技巧を聞かせても、歌の内容が伝わらなければ聞く人は感動しません。

先ず4つの"W"-Who、Where、When、What、

自分が誰で、何処で、何時(時代は何時か、朝か夜か等)、何を歌おうとしているのか、を調べてから"How"、どのように歌いたいかを決めましょう。

声や技術にこだわる前に、どうしたら内容を伝える事が出来るかが大切です。

声を出す以前の勉強をおろそかにしないことです。


No.6 体で表現

表現の30%は表情。特に目。

気張った顔や死神のような顔ではいくら良い声で歌っても感動を与える事は出来ません。

やさしい顔で歌っていますか?

目が歌い掛けていますか?

口はちゃんと開いていますか?

顎がゆれるくらいリラックスしていますか?

歯をくいしばってはいませんか?

そして舌、スプーンのように中央がへこんでいますか?

舌根が固い方は高い声が聞き苦しいか、届かないのです。


No.5 口の開け方ではっきりした発音になる

楽器と歌の一番の違いは「言葉」がある事です。

声量や技術がすぐれていても、歌の意味、内容が伝わらなかったら歌う理由が半減します。

日本語を話す時私達は殆ど口を動かしません。

「よい御天気ですね」と言ってみてください。唇も舌も顎もほとんど使っていないのが解るでしょう。

たとえ歌詞が日本語でも歌う時は大げさに動かすことです。

外人になったつもりで口の部分品を動かしましょう。

 

ア行 の発音には指2本が縦に入る位の縦楕円形の口をあけましょう。

無理に開けるのではなく耳のすぐ下から顎を落とすつもりで。

 

エ行 を言う時は アの口のサイズを変えないで舌の形だけ変えるつもりで。

口の形まで平たく横に開けてしまうと平べったいつぶれた声になってしまいます。

イ行 も上下の歯の間に2、3ミリの隙間があるように。絶対完全に歯をとじないよう。

オ行 日本語の オ より頬と唇を前に出すと深い オ になります。

ウ行 日本人に一番苦手なのが ウ です。

ひょっとこの口、若い方ならチューをするときの口をするとはっきりした ウ が出来るでしょう。

 

言語が何語であってもはっきり発音する事に心がけましょう。

 


No.4 よい声で生まれても、発声が悪い人は早く歌えなくなってしまう

肺一杯に入れた空気が声帯を通して口から出るのが声、それにリズムと音程と言葉が付くと歌になります。

歌は誰でも歌えますが正しい発声で歌って居る方は案外少ないようです。

すぐ声が枯れる、喉が痛くなる、疲れる方は発声法を直しましょう。

息が短くてすぐ苦しくなるのは一度にすった空気が一度に多量に出てしまうから。

横隔膜は車でいえばブレーキの働きをするので、歌っている間はずっと緩めないで少しずつ空気を出す役目をします。

それに対して声を出そうとする吐く息がアクセル、この二つのバランスがよいと、長いフレーズも歌えるし丁度よいビブラートの声になります。

ちょうどゴム紐を上下で引っ張り、紐がピンと張った状態になれば理想的です。

ゆらゆらする深いビブラート、又はヤギの鳴声のような細かい揺れのビブラートになってしまう方は、声を出す力と出るなと引っ張る力のバランスがうまくいっていないのかもしれません。


No.3 息は鼻から吸いましょう

腹式呼吸とは下腹部を張るのではなく横隔膜呼吸の事です。横隔膜の位置が解らない方は咳をしてみてください。

手をあてれば胃のすぐ下にある筋肉が動くのが解ると思います。

息は鼻から吸いましょう。口からだけではたっぷり空気を吸えませんし、喉を壊します。

鼻から気管を通って肺に入った空気は肺をゴム風船のように膨らませるので、肺が膨らめるよう胸郭も広げておいてください。

胸の肋骨と肋骨の間に隙間が出来るので手で触ると1本1本の肋骨を感じるように膨らませてください。

空気が満杯になった肺はさらに膨らみたくて、下にある横隔膜を押し下げ、押し出します。ですから息を吸った時横隔膜の辺りは固くなり、前方にせり出しているハズです。吸ったのにお腹が引っ込んでいる方、又はプよプよしている方がいらしたら一寸呼吸法が違って居るのだと思ってください。

次回は吸った空気を声帯を通して吐き出す、即ち歌うことについて勉強しましょう。


No.2 発声器官の力を抜こう
声は声帯から出るからと喉を絞めつけて歌ってはいけない。喉を壊す原因になるし、苦しそうな声に聞こえてしまう。

発声器官の力を抜こう。先ずくつろいで座りゆっくりした気分で目を閉じ、自然に舌が垂れる時の感じを体得しよう。

人がまさに眠りに入る時の状態で、唇にも顎にも力は入ってないはずである。この訓練で何時でも歌う時に力を抜く事が出来るようになる。

歌って居る時誰かが唇をさわるとプルンとなるはずだし、人差し指と親指で顎をつかみ、自分の意思でなくガクガクと自由に動かせるか試してみよう。立ってみよう。肩を上げるな。膝を曲げた状態で歌いだすな。お尻や足にも力を入れるな。胸はゆったり開き横隔膜だけを硬くして呼吸する。
次回は横隔膜呼吸について。


No.1 リラックス
肩をいからせず、手はぶらぶら、足は自然に、首、喉、舌、全部を緩め、寝ぼけ顔のままで声を出してみよう。

気張るな。吠えるな。叫ぶな。声量は後で。先ずは自然にため息をしてみよう。アーアと言うとき人はどこにも力を入れて

居ないはず。

さあ、次回は姿勢や呼吸にふれましょう。

歌い手のためのミニレッスン

 

87歳になっても歌っていられるのはアメリカで学んだ発声法のお蔭。
これから毎月少しずつ経験から得たヒントを紹介しよう。  若い歌い手さん達に何かのヒントになれば嬉しい。